2021.04.14
コロナ禍における駅前中小飲食店舗の独自データ分析『業態と立地による売上高比較』
サマリー
- 1. はじめに
2. コロナ禍における飲食店舗の売上高の比較方法について
3. 立地による売上高の推移
4. 業態による売上高の推移
5.まとめ
1. はじめに
店舗流通ネットが手がける店舗リース事業の出店コンサルティングを利用した飲食店舗(以下、「サポート店舗」)は2021年2月末には3,518店舗を超えた。
この「サポート店舗」は、三大都市圏を中心とする主要鉄道駅から徒歩4分圏内が87.1パーセント、中央値は2分圏内という「駅前立地」に所在している。
2. コロナ禍における飲食店舗の売上高の比較方法について
まず、コロナ禍における飲食店舗の売上高を比較するために「サポート店舗」と、全国の飲食店舗の次のデータを使用した。(比較期間:2020年1月~2020年12月)
- 【データ1】
- 店舗流通ネットの「サポート店舗」の売上高 前年同月比
- 期間:2020年1月~12月
対象店舗:サポート店舗(66業態の飲食店)
- 【データ2】
- 一般社団法人 日本フードサービス協会(http://www.jfnet.or.jp/data/data_c.html)が公表する「外食産業市場動向調査」のうち売上高 前年同月比
- 期間:2020年1月~12月
対象店舗:全国の213事業社による飲食店36,757店舗
3. 立地による売上高の推移
前述のデータを比較した分析結果から、とくに注目すべき特徴をレポートする。
「サポート店舗」の売上高前年同月比は、全国の一般的な飲食店舗とくらべて増減率が低い
店舗流通ネットの「サポート店舗」は、「外食産業市場動向調査」の対象である一般的な飲食店よりも売上高の前年同月比の増減が少ないことがわかった。
「サポート店舗」の多くが三大都市圏の主要鉄道駅から徒歩4分圏内の30坪未満の店舗であることから、交通アクセスのよい駅前立地の中小飲食店舗は、新型コロナウイルスの感染が拡大していてもその影響は比較的少ないといえる。
4. 業態による売上高の推移
次に、「サポート店舗」を66業態に分類し、分析を行った。
業態別では、コロナ禍でも優位とされる「焼肉店」の売上高増減率はわずかな差にとどまる
飲食店の業態のなかでも、店舗全体や座席ごとに換気設備があり、店舗スタッフと来店客との接触が少ない「焼肉店」は新型コロナウイルス感染症の影響を受けにくいと言われている。
そこで「サポート店舗」全体と「焼肉店」の2020年1~12月の売上高の前年同月比を比較・検討した結果、「サポート店舗」全体にくらべて売上高の増減率はやや小さいものの、明らかに「優位」とは言えない結果となった。
「バー」は、コロナ禍にあっても売上高の下落が小さく需要が高い
業態別でとくに注目すべき結果となったのは、「バー」の売上高の前年同月比がほかの業態にくらべて減少率が少なく影響が軽微だったことである。1回目の緊急事態宣言が発令された2020年4月7日前後に大きく売上高が下落するものの、その下落幅は「サポート店舗」全体の約80パーセントに対して約40パーセントと低く、同6月以降は120パーセントへ急回復した以降も高い水準で推移している。
5.まとめ
三大都市圏の主要駅から徒歩4分圏内にある駅前立地の中小飲食店舗は、コロナ禍においても収益力は高いということが、定量的に立証ができた。また、業態別の売上推移は、焼肉業態の売上増減はわずかである一方、バー業態はコロナ禍においても、他業態より高い売上を示した。
これらの結果から、店舗流通ネットでは新型コロナウイルス感染拡大の影響下であっても、次のような店舗の需要は高いと考察する。
- 交通アクセスのよい店舗
- おひとり様~少人数で利用しやすい業態
- 一席あたりの面積(店舗面積/席数)が広く、「ソーシャルディスタンス」が保たれる業態
なお、店舗流通ネットでは、今後「サポート店舗」の多彩なデータを四半期ごとに分析・公表し、外食産業市場全体の活性化と持続可能な事業への活用に貢献するために有効活用していく。